■宜興紫砂 
紫砂泥は焼き上がりの色から大きく分類すると紫泥段泥(黄・緑)、朱泥(紅泥)にわかれます。これを総して「紫砂」といい、「富貴土」とも呼ばれます。最近、紫砂紫泥の区別がつかず間違えた表記をよく見かけますが、紫砂の中に紫泥と朱泥・段泥が含まれます。紫砂は丁蜀鎮付近で取れるカオリン粘土を指し、有名な景徳鎮近くの高嶺産の土と同質のものです。粘土とは長い年月による岩石の風化物ですが、カオリンは長石の風化によってできます。また宜興の紫砂泥は大量の鉄分(10%程度)を含み,粒子は景徳鎮に比べ比較的大きめで顆粒状の礦物が含まれています。

宜興紫砂

宜興紫砂とは、宜興市で焼き物に用いられる土(甲泥)のなかで、1トンの焼き物用の土から数百グラムしか取れない貴重な土です。ゆえに別名「岩中岩」「泥中泥」とも呼ばれいます。
紫砂(泥)は焼きあげると、目に見えない気孔をつくるのが特色で、焼き上がった物の保温性や強度、どれをとっても急須を作る上で最高です。また、無数の気孔が,お茶を淹れた際に,お茶の雑味を吸収してお茶をおいしくすると言われますが、
実際は遠赤外線により水のクラスタが分解され、体に悪い物を排出した、茶葉に対し浸透力の強い水を作ります。宜興の急須に入れた水は数年経っても腐らないとさえ言われています。

宜興急須は17世紀ぐらいから東インド会社を通じてポルトガル人によってヨーロッパに持ち込まれました。アヘン戦争にまで至った紅茶の輸出ですが、宜興の急須も同じ道を通ってヨーロッパに広がっていきました。






朱泥

朱泥は、西香山付近川埠趙荘村で取れる「嫩泥」と言われる土の中に含まれます。その成分は鉄分が非常に多く堅いため、採掘するのが困難です。取れる土の層に限りがあるため最近では本物は少なく、悪い土に化合物を混ぜたり釉薬を塗って作られることが多くなりました。焼き上げる温度は一般的に低めなので、日本茶や台湾茶に合う物はなかなか見つかりません。日本の美術館に所蔵されている急須の大半が焼きすぎで白くなってるのを見かけるのは、いかに高い温度で焼くのが難しかったかを物語っています。


朱泥急須

朱泥急須は比較的小振りで、かつて主に日本に輸出されましたが、常滑など国内で生産されるようになったため、日中戦争を期に殆ど入荷されなくなりました。

朱泥のおこりは江蘇省宜興ですが、常滑では安政年間(1854〜59年)杉江安平が研究完成して名声を上げました。
また、明治11年(1878年)清人金士位が来日して中国式朱泥製法を伝えて以来、常滑は宜興に注ぐ朱泥の生産地になり、台灣の日本統治時代に鴬歌にその製法を伝えました。

80年代に台湾で工夫茶がブームが興ると、中国と国交のない台湾では紫泥の標準壺以外は入手が難しく、発酵度の低い台湾茶に適した日本の骨董の朱泥急須に人気が集中しました。現在、古い急須に法外な値段が付くのはこのせいだと思われます。

さらに紫砂急須の故郷、宜興県は陽羨紅茶の産地として有名であり、当地には紅茶に適した大振りな紫泥急須が多く、小降りの朱泥急須はあまり生産されないことが、日本茶に適した朱泥急須を入手することを困難にしていると考えられます。

朱泥急須が少なくなったのは、1.原材料が少ない。2.採るのが大変。3.使う必要がない・・・といったところでしょう。
常滑朱泥急須







紫泥急須(文革壺)
紫泥急須

紫泥は丁蜀鎮郊外の黄龍山の「甲泥」と呼ばれる礦層から取れます。甲泥は甲のごとく堅いことからそう呼ばれ、一般的な宜興で生産される雑器などに使用される土ですが、紫泥はその甲泥一トンに対し1`グラム程しか取れません。紫泥は宜興紫砂急須を作る上でもっとも基本的な土です。

80年代の工夫茶ブームで台湾、香港では宜興の急須が注目されるようになりました。当時、台湾でよく売られていた物が左写真の標準壺と言われる形の紫泥急須です。

当時売られていた急須の中で、80年代までの物を早期壺、特に文革時期の急須を文革壺と呼んでいます。85年以降の物は、ブームに煽られた形で乱造され、雑器には余りよい物がありません。その状況は現在に至っています。





段泥急須
段泥(緑泥)急須

蜀鎮黄龍山でとれる土で「本山緑泥」とも言われています。段泥は甲泥の中に含まれますが紫泥に比べ取れる量も多くなく、急須としてはあまり一般的ではありません。

本山緑泥は淡い緑色していて、焼き上げるとクリームっぽい黄色になります。 この本山緑泥に酸化金属 を加えて焼くと緑から青に近い色になります。


カオリン鉱物には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイトという4つの鉱物が含まれています。主成分のカオリナイトはシリカと、アルミナと水で構成され、この分子達は最初から酸素と結びついているためこれ以上酸化しませんが、熱によって結晶構造が変化します。焼く温度が 500℃を越えるとメタカオリンという不規則な構造になり、800℃以上になると再結晶が起こり、カオリナイトは、ムライトとシリカに変わります。この安定した構造は年月を経ても風化せず、1000℃の火でも燃焼しないため、壊してしまう様なことがない限り、半永久的に変わらない形状、機能を有します。




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